導入事例

川崎重工業株式会社

全社横断型のDX推進「Kawasaki DX」の実現を目指して組織組成や理想的なテーマ創出及びデータ活用をNTTデータ、DataRobotと共創

Kawasaki
業種
重工業メーカー
事業規模
連結売上高 17,256億円(2023年3月決算)
背景と課題
ー 限られたリソースでの全社横断のデータ活用を目的としたCoE組織の立ち上げとDX推進が課題となっていた
ー CoE組織としてさまざまな取り組みを進めている一方で、DX推進に関する認知度が事業部門へ広がっていない状態だった
ー データ活用の取り組みテーマ、DX推進するために取り組むべきテーマ創出が課題となっていた
ー 事業部門ごとに業務プロセスが異なっていたり、多品種少量生産が故にデータの管理が複雑であったりと業態による課題を抱えていた
取り組みの効果
ー NTTデータ デジタルサクセスⓇの伴走支援で、DX推進における戦略提言や人材育成に向けた勉強会の企画・運用をすることによりデータサイエンス技術部が抱えていた人手不足を解消した
ー 「Kawasaki DX」の社内認知向上に向け社内セミナーを定期的に開催し、データ利用の基礎的な内容から社内外の具体的なデータ活用事例などを紹介した。結果、1,000名を超える参加者が集まり、社内DX取り組みの認知が向上している
ー テーマ不足解消にむけたテーマ創出ワークショップを開催。事業部側の業務課題を起点にビジネスインパクトの大きなテーマ創出に取り組んでいる。これまでに約60件のテーマが創出され、16件がPoCに発展している
ー 各事業部門のデータ活用の浸透を進めるため、現場理解に加えてどのような進め方が良いかや類似する事例などの準備等ノウハウ提供をNTTデータやDataRobot社と協力しておこない事業部門と連携したDX推進が可能となった
川崎重工業株式会社は、2030年に目指す将来像として「グループビジョン2030」を策定し、社会課題の解決とより豊かな社会の実現に向けて「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」を注力フィールドとすることを宣言した。

「グループビジョン2030」をもとに事業スタイルと各事業を支えるプロセスを大きく変革し、革新的なソリューション提供や社会的価値の創出を目指し、新たなDX戦略である「Kawasaki DX」を発表。 これに併せてDX推進の要となるDX戦略本部のもと、データ活用CoE(センターオブエクセレンス)であるデータサイエンス技術部を発足。これにより、各事業部門のデータ活用に向けCoEが社内のデータ活用プロジェクトを横串で把握・支援するDX推進の取り組みを2022年4月より本格的に開始した。

DX推進の背景

少数体制でのデジタル戦略総括部データサイエンス技術部の立ち上げ

川崎重工業の連結従業員数は約38,000名いるなかでデータサイエンス技術部は約25名と比較的少人数でのスタートとなり、限られた人数で全社のデータ活用プロジェクト連携や各事業のデータ活用ニーズの掘り起こし、AIやデータ活用に関連する教育・研修や啓蒙活動、データ活用基盤の整備など多岐にわたる活動を行っている。

さらに、各事業部門のデータ活用を推進するには現場課題や業務を深掘りし、現場理解を深める必要があるが、複数の事業部門が別会社のような業務プロセスを持っていたり、多品種少量生産が故にデータの管理が複雑であったりと業態による課題を抱えていた。

加えて、重点課題としてDX推進に対する社内認知度が低く、AI人材も不足しているといった問題に直面していた。このような課題に対して、川崎重工業データサイエンス技術部はNTTデータの「デジタルサクセス®」プログラムによる伴走支援を受けることにより、共同で直面している課題に対して解決の糸口を見出していった。

DX戦略本部デジタル戦略総括部データサイエンス技術部 第二課長の藤原 一継氏
AI・データ利活用推進の取り組み

事業部門との密なコミュニケーションがAI・データ利活用の重要な鍵

データサイエンス技術部はAI・データ利活用推進を進めるにあたり「NTTデータからは、戦略提言や人材育成に向けた勉強会の企画運用など、 当社の文化や事業背景を深く理解いただいた上で、適切なサポートを実施頂いています。」とDX戦略本部デジタル戦略総括部データサイエンス技術部第二課長の藤原一継氏は語ってくれた。

特に各事業部門のデータ活用を進める立場にあるデータサイエンス技術部は、現場理解に加えて 「具体的にどのような進め方が良いか」や「類似する事例などの準備」等ノウハウ部分に関してNTTデータやDataRobot社と協力をすることで事業部門との密なコミュニ ケーションを可能にしているという。

データサイエンス技術部の社内認知向上に向けた取り組み

CoE組織としてさまざまな取り組みを進めている一方で、まだまだ課題と感じていた点もあるという。その1つが社内におけるDX推進取り組みの認知度だと言う。DX推進を通した事業ROI創出の為には、事業部側からの認知向上や取り組みへの巻き込みを強める必要があった。

そこでデータサイエンス技術部とNTTデータは「Kawasaki DX」と「AI・データ利活用」の社内認知向上に向け社内セミナーを定期的に開催した。開催テーマは、データ利用の基礎的な内容から社内外の具体的なデータ活用事例、生成AIやBI活用など幅広くおこない、NTTデータが講師の支援をするなど協力し、社内の認知度向上をはかった。結果として、初回から1000名を超える参加者が集まり、セミナー参加者のアンケートでは満足度が平均90%を超えており、啓蒙活動の効果も絶大だという。今後、参加者のアンケート結果をもとに分析・改善も進めていくようだ。

「デジタルサクセス®」のテーマ創出内製化支援により
多様なテーマ創出を実現

DX戦略本部 デジタル戦略総括部 データサイエンス技術部 第二課 基幹職 河田 久之輔 氏
2つ目の重要課題としてNTTデータと取り組みを進めたのが、ビジネスインパクトの大きなテーマ創出だ。ワークショップ開催などを通して、事業部側の業務課題を起点に重要テーマ創出に取り組んでいる。NTTデータとDataRobotからは、ワークショップの開催、テーマ管理のTipsや方法論提供などをうけながら、テーマ創出~成果創出活動の内製化を進めている。

取り組みの根幹であるテーマ創出ワークショップではさまざまな部門から、多種多様なテーマが集まっているという。DX戦略本部 デジタル戦略総括部 データサイエンス技術部 第二課 基幹職 河田 久之輔 氏は「2日に分けて開催し、前半に出たテーマや課題に対してアプローチ方法を調べるなど、周辺知識を頭に入れて後半に臨んでいます。アプローチの選択肢はNTTデータの引き出しの多さにとても助かっています。」と語っている。

購買資材の物価変動予測では約1億円のインパクトを生み出し
さらに事業部門だけでなく人事関連のテーマでも手応え

データサイエンス技術部では40件のテーマ創出を目標に活動してきたが、これまでに約60件のテーマが創出され、16件がPoCに発展している。PoCは本来の業務に忙殺されて予定通りに進まなかったり、CoEと事業部門で足並みが揃わずに難航したりするケースも多いが、「デジタルサクセス®」による伴走支援は事業の実態に見合った現実的な進行管理などプロジェクト進行を総合的にサポートしている。

川崎重工業ではすでに、購買資材の物価変動予測に関する取り組みで約1億円ものコスト削減も見込んでいるようだ。他にも大きな手応えを感じているテーマもあると言い、河田氏は「船舶プロペラの補修部品の需要予測や、航空宇宙エンジンにおける生産工程改善といった事業部門での導入には見通しが立っています。」と語ってくれた。

さらに事業部門だけでなく、人事部門ではメンタルヘルスケアのための取組も進めており、今後データ活用によるさらなる効果が期待されている。
今後の展望

統合的なデータ基盤整備とデータ活用の民主化に向けて

DX戦略本部 デジタル戦略総括部 データサイエンス技術部 部長の中野 信一 氏
川崎重工業データサイエンス技術部では、AIやデータ活用等の社内認知の向上やテーマの創出などの取り組みを進めているが、次の取り組みとして「教育・研修の拡充」と「データ活用基盤の整備」に注力していくという。これにはデータ活用人材を増やしてデータの民主化を加速させること、そして事業部側が主体的にデータを活用できるよう環境整備をするという狙いがある。

教育・研修の拡充では、「全社員向け研修」「管理者向け研修」「経営層向け研修」など、役割ごとに異なるニーズに沿った研修制度を構築中だ。研修や勉強会を通してDataRobotやTableauのような、データ分析や数値予測を業務に活用できるツールの更なる社内浸透を進める。これにより事業部側とのデータ活用の取り組みをさらにスケールさせ拡大させていきたいという。

また今後は、データ分析ツールの普及のみではなく、多くの社員が効率的にデータに触れるようなデータ基盤の構想検討も始まっている。 DX戦略本部 デジタル戦略総括部 データサイエンス技術部 部長の中野 信一 氏は「いまは事業部ごとや工場ごとの単位でデータを活用していますが、将来的には全社で統合的にデータを管理して、経営的な判断や分析に使うということを目指していきたい。」とビジョンを語り、こうしたデータ基盤の実現にもNTTデータの知見や取り組みの支援に期待していると最後に締めくくった。

お客様プロフィール

川崎重工業株式会社
所在地
兵庫県明石市川崎町1-1
設立
1896年10月15日
資本金
104,484百万円
事業内容
船舶 ・ 鉄道車両 ・ 航空機 ・ モーターサイクル ・ ガスタービン ・ ガスエンジン ・ 産業プラント ・ 油圧機器 ・ ロボットなどの事業を展開する総 合エンジニアリングメーカー
URL
※ 記載されている内容は2024年4月現在のものです。

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