導入事例

花王株式会社

需要予測の精度向上に向けてDataRobotを導入。             大量生産・大量消費を脱却し「売れる分だけ作る」を実現

業種
製造業
事業規模
連結売上高 14,188億円(2021年12月期)
導入の背景と課題
ー サプライチェーンの変化や消費者ニーズの多様化など、大量生産・大量消費から持続可能な
社会に対応すべく改革を進めていた
ー 棚卸資産が増加しており、在庫適正化 に直結する需要予測の精度をAI技術で改善したかった
ー 参考データが乏しい新製品の需要予測では、予測難易度が高く満足な精度が得られなかった
導入効果
ー 従来行っていた新製品の需要予測手法と比較して予測精度を約40%向上。
在庫金額に換算して1商品あたり約1,400万円の削減効果を検証
ー 予測モデルを独自にプログラミングした場合と比較して、モデル構築から業務実装にかかる
データサイエンティストの工数を約50%削減
導入の背景と課題

変化するサプライチェーンに対応すべく、
需要予測の精度に着目して導入検討

花王では、eコマースの台頭によるサプライチェーン全体の変化や、消費者ニーズの多様化に伴う多品種少量生産の必要性など、従来の大量生産・大量消費の社会から持続可能な社会への変容に合わせて様々な改革を進めている。2021年にはサステナブルで自走可能な社会をリードする企業であるために、新たな中期経営計画である「K25」を打ち出した。

同年、花王ではサプライチェーンのDXを推進するためにデータサイエンスや情報技術に明るいメンバーを社内の各グループから招集しSCM部門統括の直轄組織として「デジタルイノベーションプロジェクト」を新設した。この組織に所属するチーフデータサイエンティストの石渡 氏は当時を振り返り「デジタルイノベーションプロジェクトは、従来の縦型の組織形態ではなくフラットな組織になっています。よりスピーディーにDXを推進していくために、元々ロジスティクスや生産などの部門にいた情報技術に明るいメンバーが技術的な議論を平等な立場で行なっています」と語る。

こうした取り組みの中、同部門では特に課題であった棚卸資産の増加に注目。在庫適正化に直結する需要予測の精度に着目してAI技術の活用に向けた検証を実施することになった。
SCM部門 デジタルイノベーションプロジェクト チーフデータサイエンティスト 石渡 健佑 氏
SCM部門 デジタルイノベーションプロジェクト チーフデータサイエンティスト 石渡 健佑 氏
導入の経緯

予測難易度の高い新製品需要予測をテーマに、
DataRobot単体でのPoCを実施

花王ではもともと製品の需要予測のため市販ソリューションの活用や独自プログラムの作成などを実施していた。また需要予測といえば過去データが豊富な既製品に対して時系列予測モデルを活用して行うのが一般的で、参考データが乏しい新製品では予測難易度が高く、満足な精度が得られないという課題があった。こうした課題を解決すべく、AIを活用した新製品の需要予測を検討。様々なAIプラットフォームがある中でDataRobot単体でのPoCに踏み切った。

難易度が高い課題をテーマに設定したのは、K25と合わせて取り入れた評価制度OKR(Objectives and Key Results)も後押しした。AIのような先進的な技術の導入には、コスト削減などのKPIだけでなく、難易度が高くてもチャレンジする投資的な発想が必要だったと言う。デジタルイノベーションプロジェクト データサイエンティストの箕輪 氏は「モデル構築の自動化だけなら他にもできるプラットフォームは存在しています。しかし、様々な製品を調査する中で、モデルを作るだけではなく業務に組み込んでモデルの管理を行っていくことの重要性を唱え、MLOpsと言われるようなモデル運用まで踏み込んだ機能を備えていたのはDataRobotだけでした」と語る。R&D部門など他部署で先行してNTTデータによるDataRobotの導入が行われており、良好な成果が出ていたことも後押ししたと言う。

こうした理由から花王では、DataRobot単体で新製品需要予測のPoCを行うことになった。箕輪氏は「1カ月間のPoC期間では、精度を求めることに注力しました。使い方を教えてもらうことはもちろんですが、精度が上がらない時にどうすれば良いのか?という相談に乗っていただくところが最も重要でした」と語る。特に、どういった前提で予測すれば使い物になるのかといった、設定面や運用を前提とした議論を頻繁に行なったと言う。さらに箕輪 氏は「NTTデータ社は、予測精度に行き詰まった時に、他社での豊富な事例を引き合いに出してくれました。具体的な事例が聞けることがモデル作成をするうえで非常にありがたかったです」と、その豊富なノウハウを評価。

こうしたPoCの結果、実業務への適用に向けて十分な予測精度を確信。また運用を踏まえた提言の重要性を実感したことや、豊富な経験とAIサクセスのメソッドによるサポートを期待してNTTデータによるDataRobot導入を決定した。
SCM部門 デジタルイノベーションプロジェクト データサイエンティスト 箕輪 映友子 氏
SCM部門 デジタルイノベーションプロジェクト データサイエンティスト 箕輪 映友子 氏
導入効果

予測精度の向上だけでなく、
データサイエンティストの大幅な工数削減も実現

DataRobotによる新製品の需要予測では、PoCで検証対象とした「ヘルス&ビューティケア」の新商品について従来の予測手法と比較して予測精度で約40%の改善が実現できたという。これは在庫の金額換算で約1,400万円に相当する。花王では、年間で約450品目(化粧品事業を除く)の商品をリリースするため、DataRobotによる需要予測をさらに活用拡大した場合、膨大な在庫削減効果が見込める事になる。

また、DataRobotによる導入効果は予測精度の向上に留まらず、さまざまな効果があると言う。箕輪 氏は「データサイエンティストがモデル構築から業務実装にかける工数は約半分になっています。捻出できた時間で、精度向上にはどうすれば良いのか?など、より重要なことを検討できるようになりました。」と言う。

さらに石渡 氏は「予測結果を元にマーケティング部門や事業部門とコミュニケーションを取り、需給業務で使用する計画値自体をより現実的な値に近付けて行こうという動きが生まれ、リスクの高い意思決定をしなくて済むようになってきています。需要予測にDataRobotを使って基準となる値を出すことで、我々人間に求められる“意思決定”のフェーズをより高度にできるということが非常に大きな効果だと思います」と語る。
今後の展望

今後はさらなる予測精度の向上を目指し、
SNSデータなど外部データも活用したい

花王では目下、DataRobotを導入したことによって、製品の企画や計画を立てる側にAIによる予測結果を様々な形でフィードバックをできるような体制や会議体などを整備しているという。「AIプラットフォームを導入しただけで、大きな成果を得ることは難しいと考えています。組織や会議体など、需給計画プロセス全体をしっかり作っていこうとしています」(石渡 氏)

また、予測精度の向上に関しても、これまでは活用にハードルがあった外部データなどを取り入れてさらなる飛躍を目指していくという。クラウドベースのAIプラットフォームであるDataRobotでは外部データとの連携が他社製品より容易にできるようになっている。まずは、NTTデータが提供するTwitter集計データを活用していく予定だ。
DataRobotを使った需要予測モデルで新商品の販売予測的中率が改善

お客様プロフィール

花王株式会社
花王株式会社
所在地
東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号
設立
1940年5月(昭和15年)
資本金
854億円
事業内容
「ハイジーン&リビングケア」「ヘルス&ビューティケア」「ライフケア」「化粧品」の
コンシューマープロダクツ事業と、産業界のニーズにきめ細かく対応した「ケミカル」事業
URL
※ 記載されている内容は2022年5月現在のものです。

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